空き家対策で増す公費負担
富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
2015年5月に全面施行された空家対策特別措置法では、自治体が危険な状態などになった空き家の所有者に対し、指導・助言、勧告、命令、代執行の措置をとれるようになった。措置の実績は2016年10月1日時点で、指導・助言5009件、勧告137件、命令7件となっている。指導・助言に従わず勧告になると、敷地に対する固定資産税の軽減措置もなくなるため、指導・助言の段階で従う所有者は多い。命令にも従わないと代執行(強制的取り壊しなど)になる。代執行の実績は4件である。費用は所有者に請求されるが、回収できない場合も多く、その場合、公費負担となる。
代執行でも、所有者がわからない場合に行われるのが略式代執行であり、この実績は18件と通常の代執行よりも多い。従来、所有者不明の場合、代執行できなかったが、空家対策特別措置法でできるようになった。自治体が、事態が切迫しているにもかかわらず、対応できなかった所有者不明の空き家の代執行を急いだことを示している。しかし、所有者が不明のため、費用は請求できない。所有者が責任を果たさないと、自治体の負担は増える一方である。
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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】