日本の問題

トランプ大統領のアメリカ

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

アメリカ大統領選は大方の予想に反してドナルド・トランプ氏が勝利し、今月、大統領に就任する。ワシントンのインサイダー(消息通)であるベテランのヒラリー・クリントン氏ではなく、トランプ氏を選んだということはアメリカの選挙民が「変化」を望んだということなのだろう。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」のスローガンのもと、内政に注力し、海外でのアメリカの安全保障上の役割を縮小すると表明している。また、アメリカの駐留コストを日本などにさらに負担するよう求め、NATO(北大西洋条約機構)についても同様の変化を要望している。

モンロー主義とまではいかないまでも、内政に重点を置き、海外でのコミットメントを日本や韓国などに肩代わりすることを求めていくことになるのだろう。こうした要望が強くなると、日本は憲法問題を含む新しい課題に直面することになる。日本に核武装を要求する可能性もあるという。アジアの脅威に対して日本が独自で準備を進めるべきだというのだ。どこまでそうした要求をしてくるかは未知数だが、日本にとっては頭痛の種になりそうだ。

2017年1月16日

過去記事一覧

榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏