日本の問題

コンパクトシティ

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

全国で人口減少と高齢化が進む中、地方都市においては都市の密度をどう維持するかが大きな課題となっている。人口が増加した時代にできた都市構造を放置すれば、行政サービスのコストはかさみ、生活の利便性も損なわれてしまう。

そこで構想されているのが「コンパクトシティ」。商業や医療・福祉の生活機能を都市の中心部に集積させ、住民の中心市街地への居住を誘導しようとするものだ。

理屈のうえでは筋の通った話なのだが、現実にはコンパクトシティ化は進展していない。多くの人が先進事例と認めた富山市は、LRT(低床路面電車)の導入などで脚光を浴びたものの、郊外のショッピングモール周辺での宅地開発に歯止めがかからない。青森市がコンパクトシティの核と位置づけた再開発ビル「アウガ」は運営母体があえなく経営破綻してしまった。

人々の居住の自由をコントロールするのは容易ではないことを物語る。国は「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」を示す「立地適正化計画」の策定を求めているが、計画に血を通わせるためには住民との密な対話が欠かせない。

2017年5月29日

過去記事一覧

荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏