日本の問題

不安定化する中国経済

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

中国経済は1980年から2011年までの30余年、年平均で約10.02%という高成長を達成した。しかし、2012年から成長率は7%台に低下し、2016年は6.7%と6%台に低下。さらに2017年は約6.6%、2018年はさらに下がり約6.2%という予測だ(いずれも2017年4月のIMF「世界経済見通し」より)。

高度成長期が終焉し、安定成長期に移行したといえるのだが、このところの急速な成長率の低下は問題含みではないかと思われる。いわゆる李克強指数(鉄道貨物輸送量25%、銀行融資残高35%、電力消費40%からなる指数)も2014年から2015年に急落し、2016年以降若干回復しているものの、景気が力強く回復しているということではないようだ。製造業中心の指数はサービス業化が進んでいる中国ではもう時代遅れだという見方も強い。

いずれにせよ、過剰設備を抱え、企業や地方政府が多額の借入金を返済しなければならない状況で、中国経済が調整期に入り、不安定化していることは確かなようで、こうした状況の中で中国からの資金流出は加速している。

2017年5月15日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏