日本の問題

グローバリゼーションの終焉

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

第2次世界大戦後、特に1990年代以降はいわゆるグローバリゼーションが進んだ。欧州統合もドイツとフランスの協力で1990年以降、加速度的に進展し、1993年のマーストリヒト条約によって欧州連合(EU)が創設、1998年には欧州中央銀行(ECB)がつくられ、1999年には共通通貨ユーロが出現したのだった。

アメリカ大陸でもNAFTA(北米自由貿易協定)が1994年に発効し、新しい自由貿易圏が生まれた。アジアではEUやNAFTAのような組織はつくられなかったものの、事実上の経済統合が進んだのだ。

しかし、2016年のイギリスのEU離脱決断によってEUは崩壊の兆しを見せ、アメリカのトランプ新大統領はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の離脱、そしてNAFTA再検討を進めている。グローバリゼーション・統合の時代は終わりの始まりを迎え、再び主権国家中心のシステムに戻っていくような気配だ。

アジアでも中国とASEAN諸国の関係が不安定化し、「ASEAN+3(ASEANと日本・中国・韓国の3国)」の政治経済統合は大きな節目を招えている。

2017年4月17日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏