日本の問題

値上げと値下げが混在

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

5月からティッシュ、トイレットペーパー、バター、チーズが値上げされ、電気料金は4カ月連続の引き上げ、6月にははがきが10円値上げとなる。秋には宅配便大手の基本料金が引き上げられるという。値上げはパルプ、原油、天然ガスなど輸入原燃料上昇と昨秋来の円安が背後にある。今後は人件費の転嫁も予想されている。

一方で、イオンは食品や日用品など254品目の値下げを、セブン-イレブンは日用雑貨61品目の値下げに踏み切った。品目は限られるが、総合スーパーとコンビニのトップが値下げを実施した影響は大きい。値下げは消費者の根強い節約志向を反映している。「脱デフレはイリュージョン(幻影)だった」(岡田元也イオン社長)という言葉がこれを象徴している。

値上げと値下げのどちらが主流になるのか。「川上」の企業物価は1月から3カ月連続で前年比プラスだが、「川下」の消費者物価の上昇は鈍い。企業は原燃料、人件費などのコスト高を最終消費に転嫁しきれていない。値上げをすれば消費者が節約志向を強めるという悪循環を断ち切れず、値上げの頭を押さえる状況が続く。

2017年5月8日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏