日本の問題

開業率が上がらない理由

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

政府は2013年の日本産業再興プラン(成長戦略2013)で開業率の目標を他の先進国並みの10%台としたが、数字が出ている直近の2015年度で5.2%と目標からほど遠い。ネットビジネス、人工知能など起業を促すテーマは豊かだが、成長のエンジンとなる開業率は上がらない。

なぜか。理由のひとつは「起業後の収入不安」だ。リスクを嫌う若者が増えているといわれるが、起業に失敗すれば正社員への再就職は厳しい。労働力不足を背景に大企業などへの就職が比較的容易な時代、わざわざ収入不安定な起業を選択する必要もないというのが、多くの若者の本音だろう。

「失敗した時の生活リスク」も重荷だ。アメリカでは起業損失は主にベンチャー投資の負担、起業家は敗者復活できるが、日本では失敗すれば、融資の際の個人保証に縛られ自己破産するなど、社会復帰が難しい。

一定の条件のもと融資に個人保証を求めない「経営者保証に関するガイドライン」の適用が2014年に始まったが、あまり浸透していない。無保証融資は増えず、銀行は低利ザヤをカバーするため、むしろ融資保全を強めているとの指摘もある。

2017年8月28日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏