日本の問題

貨客混載

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

過疎地を中心とした人口減少や運送業の担い手不足を背景に、旅客と荷物を同時に運ぶ「貨客混載」が9月に解禁される。1970年代に確立された貨客分離原則の半世紀ぶりの転換である。

今回の規制緩和で、従来は350㎏未満の荷物しか積めなかった乗合バスの重量制限が撤廃され、全国で大容量貨物の配送ができるようになる。ヤマト運輸と宮崎交通は、2015年から共同で中山間地の路線バスの貨客混載を試行してきた。集配拠点と配達先を往復する宅配ドライバーの負担軽減や、バス事業の採算性向上などの実績が、今回の制限撤廃に道を開いた。

また、過疎地限定ではあるが、タクシーや貸切バスでも貨物運送が認められ、貨物運送業者がトラックで旅客を運ぶことも可能になった。物流サービスと人流サービスの垣根を取り払うことで、新たなビジネス展開がはじまり、地域の社会インフラ維持につながると期待される。

ここには人口減少社会を生き抜くヒントがある。高度成長社会で形成された専門化・細分化の流れを逆転させ、いかに融合させていくかが問われているのだ。

2017年8月21日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏