日本の問題

大学教育無償化への疑問点

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

安倍首相の新年施政方針演説以来、大学教育の無償化が議論されているが、実現には曲折が予想される。まず財源だ。大学教育無償化には約3兆円を要し、教育国債を財源に充てるという。だが、国債累増に悩む財務省は教育国債発行に消極的だ。

世代内の不公平を指摘する声もある。2016年度の大学進学率は約52%だ。 残りの約48%の非進学者は大学無償化の恩恵に浴せない。さらに、進学率は親世代が高所得であるほど高まり、低所得になるほど低くなる傾向にある。つまり、無償化の恩恵は所得が高い家庭に偏りがちで、所得分配の逆進性が強まるという難点もある。

もうひとつ、大学進学適齢の18歳人口の減少が続く中、私立大学の新設が相次いだが、今では私大の約45%が定員割れで経営難に見舞われている。大学無償化は淘汰されるべき私大の無原則な救済につながるという批判も根強い。

疑問の多い無償化より奨学金の拡充を選ぶべきだという声がある。低所得層の子には給付型奨学金、卒業後の返済に苦労する向きには年収に応じ返済額が変わる貸与型奨学金の拡充が望ましいという。

2017年7月3日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏