日本の問題

消費増税の使途変更と財政再建

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

総選挙で自民党などの与党が圧勝し、2019年10月に予定される2%の消費税率引き上げ分について、年金、医療、介護などに限定されていた使途を教育などに広げるとする公約の実現が課題になる。

政府案によると、税収増加分5兆円超のうち2兆円が教育などの支出に充てられる。3~5歳児の幼稚園・保育園無償化約8,000億円、低所得世帯の大学教育無償化約8,000億円が主なもの。2兆円のうち保育受け皿整備に使われる約3,000億円の財源には事業主拠出金が予定され、財政赤字の解消(借入金返済)用途からの使途変更は約1.7兆円に圧縮される。

この1.7兆円分は最終的に財政赤字の積み上げとなる。加えて税率引き上げと同時実施される飲食料品に対する軽減税率導入の必要財源約1兆円のうち6,000億円の手当てがついていない。

その結果、楽観シナリオでも2020年度の基礎的財政収支(税収などで国債費を除く政策経費を賄える水準)の赤字は10兆円ほどに拡大。政府は2020年度黒字化の国際公約を先送りする。財政再建に国際的な疑問符がつく恐れもある。

2017年11月20日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏