公務員65歳定年導入への課題
経済ジャーナリスト
大西良雄 氏
大西良雄 氏
政府は国家公務員の定年を60歳から65歳に延長する法案の検討に入った。2019年度から段階的に定年を引き上げる構えだというが、課題も少なくない。
まず、定年延長は設計次第で総人件費の膨張を招きかねないこと。地方公務員の定年延長も国家公務員に準ずる形となり、両者合わせた公務員総数は287.8万人、総人件費は26.6兆円(2017年度予算案ベース、財務省)に上る。新規採用を抑制せず定年延長だけを断行すれば、総人件費が膨張、財政赤字を拡大させる要因になる。
公務員定年の延長が民間企業の定年延長を促す効果はあるだろう。だが、民間では65歳以上定年を導入した企業と定年制を廃止した企業の割合は計18.7%にとどまり(厚生労働省平成28年「高年齢者の雇用状況」)、多くは65歳定年の導入を給与水準が大きく下がる継続雇用でしのいでいる。
年金を含む生涯給与では「官高民低」の状態だ。公務員の定年延長を急ぐ前に、民間の継続雇用にあたる公務員再任用制度の活用や役職定年制の導入、高年齢公務員の給与抑制・削減など人事制度の改革を図るべきだという声がある。
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(2017年9月19日)
1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。