日本の問題

市民マラソン

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

2007年に始まった東京マラソンが火つけ役となって、市民マラソンブームが起きている。フルマラソンだけでも全国で年間約200大会が開催され、ハーフや10㎞、5㎞の市民参加型ランニング大会を含めると総数は1,500にも上るとされる。

東京マラソンの人気は高く、一般参加枠には10倍を超える応募が続いている。一方で全国各地でも遠方からの市民ランナーを集める大会が増えた。その魅力は、風景を楽しみながら走れること、補給所で地元グルメがふるまわれること、そして沿道に地域住民の温かい声援があることなどだ。

しかし、中には当日の交通渋滞が予想をはるかに上回り、多くの参加者がスタート時刻に間に合わなかったり、距離測定の不備で、せっかくの完走記録が認定されなかったりする例もある。交通規制をはじめ、主催者側にも万全の準備が求められる。

シーズンとなる冬場には、全国で数十もの大会が開催される日もあり、飽和状態に近い。参加者からすれば、魅力的な大会を選別する時代に、主催者からすれば、運営の質を高めていかにして生き残るかが問われる段階に入ったといえそうだ。

2017年12月11日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏