日本の問題

所有者不明マンション

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

所有者が不明・不在の土地が全国で増えているが、最近はマンションでも現れている。土地と同様、相続時の未登記や相続放棄が増えていることによる。国土交通省の調査によれば、「連絡先不通または所有者不明」の物件があるマンションは約14%に達する。連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションは、古いマンションが多い。

こうした物件が増えることの問題点としては、①管理費や修繕積立金が徴収できなくなること、②管理が行われないことで劣化が進んだり周囲に悪影響を及ぼしたりすること、③多数決決議が困難になることなどがある。つまりは、マンション管理上の様々な支障をきたすということである。

管理不全の事態を避けるため、長期間空室になっている物件について、利用権や所有権を与える仕組みを作るべきとの意見もある。マンション管理組合が、将来所有者が現れた場合に支払う補償金を供託したうえで、権利を得る仕組みである。所有者不明の土地は、公共性を持つ事業に使えるようにする法律制定が目指されているが、マンションについても近い将来、何らかの仕組みが必要になる可能性が高い。

2018年1月4日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏