飛躍の源泉

柔軟な発想力と捨てる決断

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

富山県砺波市にある「三楽園」は鳥越(とりごえ)の湯として有名な温泉を持つ庄川温泉郷の中心的旅館だ。代表取締役社長の坂井彦就氏はバブル崩壊後、温泉だけでは客を呼ぶことはできないと、「美容」をキーワードにエステ事業を始め、成長させた。

しかし、その後エステを行う旅館は増加。さらなる付加価値を模索する坂井氏が気づいたのが、自社の最大の価値は「良質な温泉」ということだ。そうして始めたのが、「ビオファンゴ・セラピー」。温泉成分が濃縮された温泉泥(ファンゴ)を体に塗ることで、入浴より短期間で温泉効果を得られる湯治プログラムだ。本場イタリアでは保険適用もされている医療行為であり、これこそ「良質な温泉」を活かせる手法だ! 坂井氏は2つあった大浴場の1つをファンゴルームに改装。さらにはゆっくり癒される目的にそぐわないからと、カラオケを廃止した。リーマンショック後の厳しい状況の中、「このままではいつか淘汰される」との思いが背中を押した。

現在、同社は「美容」に加え「健康」を新たなテーマに飛躍を遂げ、「ミシュランガイド富山・石川2016特別版」で「最上級の快適」の評価を受けた。柔軟な発想力と、目的を絞り込むための捨てる決断力が成功を導いた。

2018年3月5日

三楽園 :

富山県砺波市庄川町金屋839
【三楽園 HP】

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1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏