飛躍の源泉

落語家のバー

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

無機質なコンクリートの町の代表格に数えられることもある名古屋だが、じっくり町を歩くと、意外に古い町並みが残り、歴史に育まれた雰囲気がそこここに残る。大須(名古屋市中区)もそうした歴史ある名古屋のいわば下町であり、最近は若い世代に人気である。その大須に少し風変わりなバーがある。「駄菓子屋バー チャーリーズ」。常連客だけでなく、県外からわざわざ訪れる客も多い。

実はこの店の店主は、雷門福三という落語家。名古屋は芸どころ。大須には演芸場もあり、江戸でも上方でもない、名古屋の落語を発展させてきた。雷門も明治期に東京から名古屋に移って以来の一門である。「名古屋の言葉で、名古屋の話を落語にしたい。若い人たちに興味を持ってもらい、地元のことを知ってもらうためにも、東京や大阪の落語をそのままやるのではなく、名古屋ならではの落語を作っていきたい」と福三氏は話す。

地元の言葉・習慣・文化を残していこうという取り組みは、小さいけれども各地で見られる。笑いが絶えない下町の小さなバーで、今宵も駄菓子をつまみに酒を酌み交わす客に向けて、福三氏が語る地方の文化や歴史。そんなところから新しいビジネスにつながるきっかけも生まれてくるかもしれない。

2016年2月29日

駄菓子屋BAR チャーリーズ :

愛知県名古屋市中区大須2-7-46
【雷門福三公式 HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏