印刷業から出版の新市場を創造
立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏
山口 義行 氏
株式会社三恵社は、愛知県名古屋市にある印刷会社だ。今や構造不況業種といわれる印刷業界で厳しい状況に苦しんでいた。
そこで、代表取締役の木全哲也氏が挑戦したのが出版業への展開。しかし、出版業界も取り巻く環境は厳しく、「印刷がダメなら出版へ」では通用しない。彼が挑んだのは、他社が本格的に参入していなかった分野。具体的には、大学教授が講義用に自ら印刷しているレジュメを1冊にまとめて安く販売する「少部数テキスト出版」だ。
しかし、ビジネスとしては難しい問題があった。同社は印刷のプロではあっても、出版のノウハウや販売ルートは持っていない。ましてや少部数となると、1冊の値段は割高になる。大幅なコストダウンのためには、基本的なレイアウトや編集は執筆者に任せ、極力受け取ったデータをそのまま印刷・製本するほかない。木全氏は決断した。
現在、少部数テキストは全国250大学750人の教授に利用されている。テキスト以外に、大きな出版社が出したがらない専門書の出版など、本格的な出版社として展開している。他社の市場を奪うのではなく、それまで形にならなかったニーズを新たな市場にする。これこそ、中小企業の“市場創造”である。
2015年6月22日
株式会社三恵社 :
愛知県名古屋市北区中丸町2丁目24番地の1
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(2015年6月15日)
1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、
関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】