飛躍の源泉

世界に広がる爪切り

明治大学経営学部教授(中小企業研究)
岡田浩一 氏

1926(大正15)年創業の株式会社諏訪田製作所(新潟県三条市)が作る爪切りは、切った後の触り心地が滑らかで、まるでやすりをかけたかのような切れ味。そのため、巻き爪で困っている人や、介護で入所者の爪切りをしてあげる人たちにも人気のある爪切りだ。ゴム系樹脂の持ち手になっているものを使えば、より軽い力できれいに爪を切ることができる点も人気の秘密である。

もともと、様々な刃物を作っていた会社だが、現代表取締役の小林知行氏が事業承継する際、「選択と集中」戦略により爪切りで勝負をかけた。「今のままでは会社が危ない」、「安売り競争を続けていてはいけない」、「これまで培ってきた技術を生かして価値を売っていこう」、そして「みんなで幸せになろう」をモットーに最高の爪切り作りを進めた。

刃物産地として名高いドイツのゾーリンゲン製に比べても技術力、パフォーマンスで上をいくほどの製品を作り上げた。職人の手仕事による見事な刃合わせ、フォルムの美しさ、切れ味をもってグッドデザイン賞をはじめ、海外でも受賞歴を持つ製品だ。ロンドン、香港に現地法人を設立し、海外での販路拡大を続けている諏訪田の爪切りはSUWADAブランドとして世界に広まっている。

2016年2月8日

株式会社諏訪田製作所 :

新潟県三条市高安寺1332
【株式会社諏訪田製作所 HP】

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プロフィール 岡田浩一

1962年新潟県生まれ。
2001年に明治大学経営学部教授に就任。専門分野は中小企業経営論。ロンドン大学ロイヤルホロウェイ客員研究員、日本中小企業学会理事、中小企業IT経営力大賞選考作業部会長、攻めのIT経営中小企業百選選定委員長。主な著書に「中小企業のIT経営論」など。

岡田浩一