飛躍の源泉

養豚経営のあり方を模索

名城大学経済学部特任助手
大前 智文 氏

愛知県半田市で養豚業を営む有限会社石川養豚場。独自のブランド豚「あいぽーく」の繁殖・肥育一貫経営に加え、食肉の卸・小売り、ハム・ソーセージの製造・卸・小売り、飲食事業などを展開、厳しさが増す養豚業界で堅調な業績を上げる。代表の石川安俊氏は一心に「おいしい豚肉」の飼育・生産にこだわる。

会社設立は1982(昭和57)年。生産性・収益性の向上と、部位ごとの需要や価格のばらつき、廃棄ロスといった経営課題を克服するため、長年温めてきた「豚一頭まるごと売る」体制の構築に挑戦。試行錯誤の末に新規取引先の開拓に成功し、事業は軌道に乗った。

転機は2000年。自前の加工・販売部門を立ち上げることにより、養豚業の経営安定と規模拡大を志向した。ここでも多くの困難に直面したが、家族・仲間・取引先の協力に支えられ、顧客の「おいしい」という声に励まされた。現在では、直売店「ファーマーズ・マーケット ブリオ」は大繁盛。農場生産量のうち直売が約6割を超えるまでに成長し、養豚業の経営基盤を支える。

今後、TPPにより養豚業の経営環境は一層厳しくなることが予想される。「おいしい豚肉を提供する」ことができる持続可能な養豚経営のあり方とは何か、模索と挑戦が続く。

2015年8月10日

有限会社石川養豚場 :

愛知県半田市吉田町4-173
【有限会社石川養豚場 HP】

過去記事一覧

1982年愛知県生まれ。
2013年に名城大学経済学部特任助手に就任。同年より日本中小企業学会幹事。駆け出しの研究者としてフィールドワークを重ね、中小企業に関する調査・研究に取り組む。

大前智文