飛躍の源泉

革新を続ける伝統企業

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

岩手県盛岡市の株式会社岩鋳(いわちゅう)は南部鐵器(鉄器)工芸品の製造・販売会社。商品は鉄瓶や急須、小物、キッチンウェアと幅広い。創業者は櫛職人だったが、市内の南部鉄器の工房に弟子入りし、1902(明治35)年に岩鋳を創業した。現社長の岩清水晃氏は3代目。創業当初から納期や品質を重視した一貫生産体制を志向する一方、新事業展開や新規顧客開拓にも力を入れてきた。

盛岡駅から5km弱の場所に立地する同社。盛岡は東北観光の要所でもあり、観光客需要を見込んで、1989年に郷土料理レストランを敷地内に開業した。また、「岩鋳鐵器館」と銘打ち、職人の作業風景を一般向けに公開したテーマパーク型工場も開設。展示ギャラリーも併設し、南部鉄器の「作り方」と「美しさ」を理解できるようになっている。

その一方、1990年代半ばに東京都に営業所を開設、都内の展示会に積極的に出展して新規顧客の開拓に務めてきた。1950年代半ばには、早くも商社を通じた南部鉄器の間接輸出にも乗り出している。2010年の上海万博以降は、中国への輸出が急拡大。現地のニーズを汲み取った牡丹や花、泳ぐ鯉の紋様が描かれた鉄器などを製造し、今では海外の売り上げが半分以上になっている。

2015年9月21日

株式会社岩鋳 :

岩手県盛岡市南仙北2丁目23-9
【株式会社岩鋳 HP】

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1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡