飛躍の源泉

世界へ飛躍するデザイン力

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

岩手県花巻市にある従業員17人の株式会社日本ホームスパンは国内唯一のホームスパン生地メーカーで、著名ブランドのシャネルとも取引している。ホームスパンとは「家庭で(home)、紡がれた(spun)」を意味する、太めの紡毛糸による地厚で丈夫な織物で、手織りの感覚が何より重要とされる。明治時代、軍隊の防寒着用に羊毛の国産化がなされた。花巻周辺でも農家による羊の飼育が始まり、ホームスパンが織られるようになった。

戦後、それらの羊毛はGHQ管轄となり、倉庫に眠っていた。創業者・菊池久氏はそれに着目し、1955(昭和30)年に創業。「高価だが、着やすい織物を直販する」をモットーに、東京の織物展示会に出展し、ファッション業界に参入していった。

年間700種類以上の新デザインの生地を、機織り機を使って開発する同社。精錬染色工場や仕上げ用の乾燥機も有し、「色が染まる理由」や「生地が縮む理屈」を十分に理解し、ホームスパンを製作している。2002年からシャネル用の織物の製作・出荷を開始した。

2002年からシャネル用の織物の製作・出荷を開始。新規販路開拓への強い志向性と、「これまで見たことがないデザインの織物を」というデザイナーの要望に対応できる企画・開発力が世界的企業との取引を可能にした。

2015年8月17日

株式会社日本ホームスパン :

岩手県花巻市東和町土沢1区89番地2
【株式会社日本ホームスパン HP】

過去記事一覧

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡