飛躍の源泉

外部との連携で生まれた新製品

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

生産コストの安い輸入品に押されて苦境のニット業界で注目を集めているのが、東京都墨田区にある丸和繊維工業株式会社だ。

1956(昭和31)年創業。肌着のOEM(相手先ブランドの製造)からスタートしたが、受注ロットの減少や出荷価格の低下、得意先の破たんにより経営状況が悪化。もっと戦略的に動かないと、生き残れない―。そう考えた代表取締役社長の深澤隆夫氏が取り組んだのが「動体裁断®」による究極の着心地だ。

機能系被服デザイナーの中澤愈(すすむ)氏が人体の皮膚を研究して考案したこの裁断は身体の動きにフィットし、両腕を上げても裾がめくれ上がらず、着用時に引きつれを感じさせない。この先駆的技術と、同社が長年培ってきた技術の融合で生まれた同社のポロシャツは、宇宙飛行士の山崎直子氏の船内普段着に採用され、墨田区が認証する「すみだブランド」にも選出された。

この技術を定番のドレスシャツで製品化したのが、独自ブランド「INDUSTYLE(インダスタイル)」。大手百貨店で販売されているほか、メディアに取り上げられ、高価な商品にもかかわらず飛ぶように売れている。外部との連携による新たな価値の創造。中小企業が生き残るためのカギを握っている。

2016年2月1日

丸和繊維工業株式会社 :

東京都墨田区亀沢1-8-6
【丸和繊維工業株式会社 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏