飛躍の源泉

ひらめきを具現化した「割裂工法」

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

茨城県日立市の株式会社関プレスは「金属加工のデパート」の異名を取る自動車部品のプレス企業。地域の大手メーカーのグループ企業との取引を基盤に、高度な成形・加工技術を蓄積・展開してきた。その技術への評価は高く、2015年11月には第31回素形材産業技術表彰の中小企業庁長官賞を受賞した。

そんな同社を代表する技術が「割裂(わりさき)工法」。プレス加工で金属を文字どおり「割り裂く」ことによって様々な部品を作ることができる技術で、従来は切削加工などによらなければできなかった。代表取締役社長の関正克氏は、自社の経営・技術を思案していた時、裂けるチーズを食べていた息子の「鉄もチーズのように裂けるといいのにね」という一言から着想を得たという。

関プレスは製造現場で、汎用機械を積極的に活用している。汎用機械を使えば、成形・加工時に生じた技術上の問題・課題を技術者が視認・理解しやすく、それがノウハウとして、社内に蓄積される。ある時、汎用機械でプレス加工していて、誤って材料が金型に挟まれ「割れた」ことがあった。その時に蓄積されていたノウハウが、関氏の着想を後押ししたのである。現在、割裂加工は国内外の展示会で情報発信され、高い評価を得ている。

2016年2月22日

株式会社関プレス :

茨城県日立市千石町4丁目3番20
【株式会社関プレス HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡