飛躍の源泉

モザイクタイルの新展開

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

岐阜県多治見市は美濃焼の産地として知られる一方、モザイクタイルの生産量も日本一を誇る。その多治見市で新たなモザイクタイルの開発と海外市場展開を同時に進めているのが、株式会社加納だ。1963(昭和38)年の創業以来、内外装タイルの開発・製造・販売を展開してきたが、2009年に海外事業部を設立し、商社経由で輸出していたタイルを直接輸出することを目指している。

その先頭に立っているのが、2代目の代表取締役社長である加納由喜氏。大学卒業後、大手商社に勤務し、海外事業に従事した後、1991年に30歳代半ばで加納に入社、1996年に社長に就任した。商社時代の経験から加納氏が抱く夢は「自社で開発・製造した内装のタイルを欧米市場で売る」こと。

ウェブで知り合った海外デザイナーと共同して、LEDライト付きタイルの開発に乗り出したのを皮切りに、光の志向性をコンセプトにした3Dタイルの開発に注力。公的機関の支援を受け、海外マーケティングの手法を学びつつ、タイルの本場であるイタリアやアメリカの国際見本市に出展を続けている。

大企業で海外事業経験を有する人材を獲得するなど、加納氏の試みは自社と地域の変革の緒となるものだといえるだろう。

2018年2月5日

株式会社加納 :

岐阜県多治見市笠原町1647-3
【株式会社加納 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡