飛躍の源泉

情報発信力が企業を強くする

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

高い技術力を有するだけでは中小製造業が価格競争から脱することは難しい。愛知県蒲郡市の株式会社蒲郡製作所もそうだった。同社の主力は精密機械の精密部品加工。中でも技術を要する微細加工に特化している。かつて、同社の提案で半導体装置メーカーの作業コストを年十数億円削減することに貢献したが、工賃はその1%にも満たなかった。

もっと知名度を上げて顧客と対等の地位を築かなければ、いつまでも単価だけの勝負になってしまう―。代表取締役社長の伊藤智啓氏は、高い技術力と提案力を「超精密サプライズ加工」と銘打ち、HPをそれまでの「何でも屋」から得意分野に絞った情報発信に変更。持ち込まれた相談にコストダウンや精度アップの提言をすることで「単価」ではなく、「付加価値」で勝負ができるようになった。

また、自身のブログの最後に、署名とともに「NASA(米航空宇宙局)と仕事がしたい」と書き、「やりたいこと」も発信し続けた。すると、NASAの人工衛星の部品を設計する大学から連絡がきて、国立天文台などへもネットワークが広がった。従業員13人の町工場である同社は電波望遠鏡や人工衛星などの宇宙産業で力を発揮している。技術力と提案力、そして情報発信力が企業を強くする。

2017年5月1日

株式会社蒲郡製作所 :

愛知県蒲郡市御幸町28-10
【株式会社蒲郡製作所 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏