飛躍の源泉

伝統工芸の組み合わせで付加価値

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

日本の伝統文化である着物。しかし、冠婚葬祭の簡素化や着付けの難しさなどから着物離れは進み、和装の小売総額はこの30年間で激減している。1840(天保11)年創業の老舗呉服屋である有限会社すかや呉服店も厳しい局面を迎えていた。

着物という日本の伝統文化を次世代につなげていくためには、伝統を守っているだけではだめなんだ! 代表取締役の綾野寿昭氏が挑戦したのは、伊勢神宮の聖地内にある樹齢500年以上の神宮杉(御山杉)を、絹100%の着物生地の下染めに使用し、国の伝統工芸品の伊勢型紙で柄を施した商品「御山杉染め・伊勢型小紋」だ。神宮杉が自然災害などで倒れたものだけが、名を変えて市場に姿を現したもので、全国でも最高級品とされる銘木を使い、お伊勢さんのお膝元で三重の伝統をまとう「地産地装」を提案した。

また、地域資源である「伊勢茶」を下染めに活用し、伊勢木綿に伊勢型紙でデザインする取り組みは「みえ地域コミュニティ応援ファンド」にも採択された。

「いかに伝統を守るか」だけではなく、現在ある伝統工芸を組み合わせて、「いかにして新しい視点を加えるか」を考えることこそが、伝統を次世代へと伝える力となる。

2016年9月26日

有限会社すかや呉服店 :

三重県多気郡多気町仁田645-1
【有限会社すかや呉服店 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏