飛躍の源泉

広島牡蠣を全国へ

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

1957(昭和32)年創業のクニヒロ株式会社(広島県尾道市)は生牡蠣(かき)などの生鮮魚介類の加工・販売や冷凍食品、チルド食品の製造・販売を展開し、特に牡蠣の加工・販売は国内トップクラスのシェアを誇る。

2代目の代表取締役社長、川﨑育造氏は大学卒業後、自動車部品企業に就職するが、ほどなく築地市場の水産企業に転じ、牡蠣や魚の加工を学んだ。家業のクニヒロに入社後、大手食品企業と共同で冷凍カキフライを扱うようになり、牡蠣の取扱量を拡大させた。

しかし、こうした状況に対応して導入した大型冷凍庫が過剰投資になり、さらに先代社長の体調が悪化するなどして、同社の経営は一時期悪化。危機を乗り越えるため、川﨑氏は牡蠣に経営資源を集中し、えびや小魚の取り扱いを大幅に縮小する決断を下した。

また、1970年代半ばまで、市場でのセリを通じて小売業者に水産物を供給していたが、川﨑氏は「スーパーマーケットが今後の日本の流通の主役になる」といち早く察知し、スーパーとの直取引を志向。その結果、同社は全国の水産加工企業に先駆けて、大阪など他地域のスーパーとの直接取引を実現した。

川﨑氏のこうした先見の明と勇断がクニヒロを一段上のステージに引き上げた。

2016年8月1日

クニヒロ株式会社 :

広島県尾道市東尾道15-13
【クニヒロ株式会社 HP】

過去記事一覧

山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡