広島牡蠣を全国へ
東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏
山本 聡 氏
1957(昭和32)年創業のクニヒロ株式会社(広島県尾道市)は生牡蠣(かき)などの生鮮魚介類の加工・販売や冷凍食品、チルド食品の製造・販売を展開し、特に牡蠣の加工・販売は国内トップクラスのシェアを誇る。
2代目の代表取締役社長、川﨑育造氏は大学卒業後、自動車部品企業に就職するが、ほどなく築地市場の水産企業に転じ、牡蠣や魚の加工を学んだ。家業のクニヒロに入社後、大手食品企業と共同で冷凍カキフライを扱うようになり、牡蠣の取扱量を拡大させた。
しかし、こうした状況に対応して導入した大型冷凍庫が過剰投資になり、さらに先代社長の体調が悪化するなどして、同社の経営は一時期悪化。危機を乗り越えるため、川﨑氏は牡蠣に経営資源を集中し、えびや小魚の取り扱いを大幅に縮小する決断を下した。
また、1970年代半ばまで、市場でのセリを通じて小売業者に水産物を供給していたが、川﨑氏は「スーパーマーケットが今後の日本の流通の主役になる」といち早く察知し、スーパーとの直取引を志向。その結果、同社は全国の水産加工企業に先駆けて、大阪など他地域のスーパーとの直接取引を実現した。
川﨑氏のこうした先見の明と勇断がクニヒロを一段上のステージに引き上げた。
2016年8月1日
クニヒロ株式会社 :
広島県尾道市東尾道15-13
【クニヒロ株式会社 HP】
- ライバルとの連携で飛躍
(2015年4月6日) - 人とつながる「縁」農活動
(2015年4月13日) - 「夢」をスタートさせるビジネス
(2015年4月20日) - 「食事の楽しさ」をデザイン
(2015年4月27日) - 事業連携の第一歩は気づきと想像力
(2015年5月4日) - 赤レンガ復元をブランドに
(2015年5月11日) - ブランド創りのカギは「やせがまん」
(2015年5月18日) - 地域から必要とされる
(2015年5月25日) - 「選択」の楽しさを提供
(2015年6月1日) - 身近な缶は、実はエコロジー商品
(2015年6月8日) - 日本の住宅産業を変える
(2015年6月15日) - 印刷業から出版の新市場を創造
(2015年6月22日) - 23区唯一の造り酒屋は大人気
(2015年6月29日) - 新規事業は足元から
(2015年7月6日) - 酒造りは良縁を醸すサービス業
(2015年7月13日) - 自前の超精密技術で、新事業展開
(2015年7月20日) - 隣接異業種への挑戦
(2015年7月27日) - がんばれ、日本の鋳物産業
(2015年8月3日) - 養豚経営のあり方を模索
(2015年8月10日) - 世界へ飛躍するデザイン力
(2015年8月17日) - 「こだわり」こそ武器
(2015年8月24日) - 自社の価値と位置を再認識
(2015年8月31日) - ママたちが「HAPPYに楽しむ」
(2015年9月7日) - 「課題解決」による顧客創造
(2015年9月14日) - 革新を続ける伝統企業
(2015年9月21日) - 中小企業が市場を創る
(2015年9月28日) - 鈴鹿から世界へ挑戦
(2015年10月5日) - 本場仕込みのヤギチーズ
(2015年10月12日) - こだわりの技術で市場を開拓
(2015年10月19日) - 100年マンションの実現を
(2015年10月26日) - 地域の資源をつなぐ
(2015年11月2日) - 挑戦を続ける最先端企業
(2015年11月9日) - メリヤスの草履が世界へ飛翔
(2015年11月16日) - アイデア銭湯
(2015年11月23日) - 着物を海外へ
(2015年11月30日) - 超硬金型を武器にタイで展開
(2015年12月7日) - ロボット技術で自立への道
(2015年12月14日) - 成長の秘訣は「捨てること」
(2015年12月21日) - 未来の糧の種をまく
(2015年12月28日)
- 伝統技術とデザイン力で世界へ
(2016年1月4日) - 時間を買ってもらう
(2016年1月11日) - 自動車から医療機器への参入
(2016年1月18日) - スーツ、金髪の若者が農業を変える!
(2016年1月25日) - 外部との連携で生まれた新製品
(2016年2月1日) - 世界に広がる爪切り
(2016年2月8日) - 経営資源の集中で新市場創造
(2016年2月15日) - ひらめきを具現化した「割裂工法」
(2016年2月22日) - 落語家のバー
(2016年2月29日) - 美濃と和紙を元氣に
(2016年3月7日) - 荒波を乗り越える「顧客支援力」
(2016年3月14日) - 「400年企業」の挑戦
(2016年3月21日) - 仏具販売を革新
(2016年3月28日) - 継承した技術を世界に発信
(2016年4月4日) - 過疎と戦う地域の活力源
(2016年4月11日) - 中小企業の国際化戦略
(2016年4月18日) - 「間」をとりもつ美
(2016年4月25日) - 自社製品を売る工夫
(2016年5月2日) - 地元資源のユニークな活用
(2016年5月9日) - お墓づくりで世直し・人助け
(2016年5月16日) - 自社製品開発による飛躍
(2016年5月23日) - 「時」が魅力を醸成する銅器
(2016年5月30日) - 「脱下請け体質」の効果
(2016年6月6日) - 顧客とともに日本の壁を楽しく飾る
(2016年6月13日) - 海から浜への再挑戦
(2016年6月20日) - 小規模企業のグローバル化
(2016年6月27日) - 琥珀色への想い
(2016年7月4日) - 花火の文化と技術を継承・発展
(2016年7月11日) - OEMから自社製品へ
(2016年7月18日) - 職人が生み出す美しい栓抜き
(2016年7月25日)
1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】