飛躍の源泉

「脱下請け体質」の効果

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

多くの中小企業にとって下請けの仕事は大切な存在だが、長年下請けを続けることで、「待っていれば仕事が来る」「言われたことをやっていれば問題ない」という受け身の体質が根付くことも少なくない。神奈川県横浜市でプレス金型の製造をする株式会社ニットーも長年、大手の下請けだった。

「脱下請け」ならぬ「脱下請け体質」に取り組まなくては! 代表取締役の藤澤秀行氏が挑んだのが自社製品の開発だ。自社の強みと技術を見直して製品開発に生かせば、社員の意欲を高めることにもつながる。ニッチなマーケットを狙い、開発の切り口は「作って楽しいか」「自分が欲しいか」で考えた。ニッチ分野はまさに中小企業の領域だ。

こうして開発された自社製品が、オリジナルのスマートフォンケース。まるでヌンチャクのようにスマホを動かして遊べるアルミ製のケースだ。その売り上げは3万台を超え、大きな収益源へ成長している。自社製品が話題になることで会社の認知度が高まり、本業の商談もスムーズに進むようになった。何より「社内に仕事への誇りが生まれ、社員の意識が大きく改革された」と藤澤氏は語る。

自社製品開発による脱下請け体質。そこには数字だけにとどまらない効果がある。

2016年6月6日

株式会社ニットー :

神奈川県横浜市金沢区鳥浜町14-16
【株式会社ニットー HP】

過去記事一覧

山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏