飛躍の源泉

自社製品を売る工夫

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

大手メーカーの下請け企業にとって、自分で値決めできる自社製品の商売は大きな魅力だが、広い販路を持たない中小企業は、長年の技術力で良い製品を作っても、売ることができず行き詰まるケースが少なくない。

岐阜県山県市の株式会社田中金属製作所もそうだった。下請けとして水栓バルブなどの真鍮部品を作っていたが、代表取締役の田中和広氏は一念発起して自社製品の節水シャワーヘッドを開発。テレビ通販での販売に活路を見いだしたが、ベンダー(販売会社)の不手際で契約は白紙に。さらに主要取引先の廃業により売り上げは10分の1に激減、債務超過が8000万円にまで達したという。

そんな中でも田中氏は製品を改良し、超微細な気泡を出すマイクロナノバブルのシャワーヘッドを開発。問題はいかにして売るか。彼が決断したのは、“実演販売”だった。「自分の商品を一番売りたいのは自分」と全国で実演販売を実践。メディアでも取り上げられて話題になり、債務超過は消え、今も月3000~5000本売れているという。

日本の技術を根底から支える中小企業。それが「裏方」で終わらず「主役」になるために必要な2つの力、“開発力”と“販売力”。田中氏の挑戦はそれを示してくれている。

2016年5月2日

株式会社田中金属製作所 :

岐阜県山県市日永1095
【株式会社田中金属製作所 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏