飛躍の源泉

中小企業の国際化戦略

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

東京都八王子市でアルミニウムの鋳物を作る株式会社栄鋳造所。現代表取締役社長の鈴木隆史氏で4代目になる。ポジティブで実行力のある鈴木氏の経営戦略の柱は「国際化」。海外市場の開拓に努力し、現在では製品の約7割が海外企業への輸出だという。

「今の時代、企業の生き残りには海外への発信が重要です。日本の中小企業も世界中から人材を集めないと国際競争に勝てないと実感します」と鈴木氏は話す。

とはいえ、中小製造業が国際的な人材を確保するのは簡単ではない。帰国を前提とした海外研修生では自社経営の将来を託すことはできない。そう考えた鈴木氏は、外国人雇用の手段として、難民の採用を決断する。

2015年に日本で難民認定申請をした人は7000人以上。認定される人はごくわずかだが、「特定活動」という在留資格を得て就労が可能になる場合がある。そうした難民に認定NPO法人難民支援協会と協力して研修を行い、自社従業員として採用しているのだ。

鈴木氏の動きは、八王子の他の若手経営者たちにも影響を与え、難民に限らず、外国人従業員の採用による自社の国際化を図る動きが徐々に広がりつつある。都心に近い八王子の町工場で国際化が進みつつある。

2016年4月18日

株式会社栄鋳造所 :

東京都八王子市下恩方町350
【株式会社栄鋳造所 HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏