業界初のサービスで「脱1社依存」
立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏
山口 義行 氏
大手1社の取引先に依存する中小企業は少なくない。千葉県千葉市の株式会社五常も、大手ホームセンター1社の売り場工事を請け負う「1社依存型」だった。大手の担当者が変わると他社の新規参入で受注が減少し、創業から10年がたったころには売り上げが半減。このままではジリ貧だ。代表取締役社長の板谷保氏は様々な新製品を開発するが、その挑戦と失敗の繰り返しは20件を超えた。
そんな中、副社長の河野佳介氏が着目したのが台車レンタル業だ。売り場工事会社では商品を移動させるために、常時大量の台車を保有している。普段は眠っているこの台車を、必要とする会社に貸し出すのだ。河野氏は台車の利用者に“不満”を聞いて回り「貸方が有利な業界」と知るや、24時間いつでもセルフ貸出・返却ができる「台車レンタル特急便」という業界初のサービスを始めた。
こうして立ち上げた新ビジネスは大成功を収めた。さらに台車ビジネスでの取引先から本業の工事受注が増え、この3年で売り上げは3倍に。ホームセンター関係の売り上げは全体の3割ほどに下がり、見事に「脱1社依存」を果たした。本業の工事業も内装から倉庫などの新築にまで事業を拡大し、同社を「日本一小さなゼネコン」へと成長させている。
2016年8月22日
株式会社五常 :
千葉県千葉市若葉区高根町1128-4
【株式会社五常 HP】
- ライバルとの連携で飛躍
(2015年4月6日) - 人とつながる「縁」農活動
(2015年4月13日) - 「夢」をスタートさせるビジネス
(2015年4月20日) - 「食事の楽しさ」をデザイン
(2015年4月27日) - 事業連携の第一歩は気づきと想像力
(2015年5月4日) - 赤レンガ復元をブランドに
(2015年5月11日) - ブランド創りのカギは「やせがまん」
(2015年5月18日) - 地域から必要とされる
(2015年5月25日) - 「選択」の楽しさを提供
(2015年6月1日) - 身近な缶は、実はエコロジー商品
(2015年6月8日) - 日本の住宅産業を変える
(2015年6月15日) - 印刷業から出版の新市場を創造
(2015年6月22日) - 23区唯一の造り酒屋は大人気
(2015年6月29日) - 新規事業は足元から
(2015年7月6日) - 酒造りは良縁を醸すサービス業
(2015年7月13日) - 自前の超精密技術で、新事業展開
(2015年7月20日) - 隣接異業種への挑戦
(2015年7月27日) - がんばれ、日本の鋳物産業
(2015年8月3日) - 養豚経営のあり方を模索
(2015年8月10日) - 世界へ飛躍するデザイン力
(2015年8月17日) - 「こだわり」こそ武器
(2015年8月24日) - 自社の価値と位置を再認識
(2015年8月31日) - ママたちが「HAPPYに楽しむ」
(2015年9月7日) - 「課題解決」による顧客創造
(2015年9月14日) - 革新を続ける伝統企業
(2015年9月21日) - 中小企業が市場を創る
(2015年9月28日) - 鈴鹿から世界へ挑戦
(2015年10月5日) - 本場仕込みのヤギチーズ
(2015年10月12日) - こだわりの技術で市場を開拓
(2015年10月19日) - 100年マンションの実現を
(2015年10月26日) - 地域の資源をつなぐ
(2015年11月2日) - 挑戦を続ける最先端企業
(2015年11月9日) - メリヤスの草履が世界へ飛翔
(2015年11月16日) - アイデア銭湯
(2015年11月23日) - 着物を海外へ
(2015年11月30日) - 超硬金型を武器にタイで展開
(2015年12月7日) - ロボット技術で自立への道
(2015年12月14日) - 成長の秘訣は「捨てること」
(2015年12月21日) - 未来の糧の種をまく
(2015年12月28日)
- 伝統技術とデザイン力で世界へ
(2016年1月4日) - 時間を買ってもらう
(2016年1月11日) - 自動車から医療機器への参入
(2016年1月18日) - スーツ、金髪の若者が農業を変える!
(2016年1月25日) - 外部との連携で生まれた新製品
(2016年2月1日) - 世界に広がる爪切り
(2016年2月8日) - 経営資源の集中で新市場創造
(2016年2月15日) - ひらめきを具現化した「割裂工法」
(2016年2月22日) - 落語家のバー
(2016年2月29日) - 美濃と和紙を元氣に
(2016年3月7日) - 荒波を乗り越える「顧客支援力」
(2016年3月14日) - 「400年企業」の挑戦
(2016年3月21日) - 仏具販売を革新
(2016年3月28日) - 継承した技術を世界に発信
(2016年4月4日) - 過疎と戦う地域の活力源
(2016年4月11日) - 中小企業の国際化戦略
(2016年4月18日) - 「間」をとりもつ美
(2016年4月25日) - 自社製品を売る工夫
(2016年5月2日) - 地元資源のユニークな活用
(2016年5月9日) - お墓づくりで世直し・人助け
(2016年5月16日) - 自社製品開発による飛躍
(2016年5月23日) - 「時」が魅力を醸成する銅器
(2016年5月30日) - 「脱下請け体質」の効果
(2016年6月6日) - 顧客とともに日本の壁を楽しく飾る
(2016年6月13日) - 海から浜への再挑戦
(2016年6月20日) - 小規模企業のグローバル化
(2016年6月27日) - 琥珀色への想い
(2016年7月4日) - 花火の文化と技術を継承・発展
(2016年7月11日) - OEMから自社製品へ
(2016年7月18日) - 職人が生み出す美しい栓抜き
(2016年7月25日) - 広島牡蠣を全国へ
(2016年8月1日) - 海藻の美しさ
(2016年8月8日) - 伝統と革新の和合が生む新たな世界
(2016年8月15日)
1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】