飛躍の源泉

子どもの声が聞こえる職場

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

東京都八王子市の株式会社アトム精密で、代表取締役社長の一瀬康剛氏のお話を聞いていると、キャッキャという子どもの声が応接室にまで聞こえてきた。一瀬氏は「夏休みで、預けるところがないという従業員の子どもが来ているんです」とほほ笑む。

同社は電子部品や電気機器、測定器など精密なものづくりを得意とする中小企業。かつては、自動車向けのカセットやCDデッキを製造していたが、次第に海外に生産拠点が移り、経営も厳しくなった。一瀬氏は創業者である先代社長から請われて入社したが、直後に先代社長が急死し、巨額の負債を抱えた同社の建て直しに奔走。食品、自動車部品などの自動化機械といった自社開発製品を持つ、自立型の中小企業に変化させてきた。

やっと安定してきた経営だが、一瀬氏は次を見据えて人材の多様化に取り組んでいる。育児に忙しい人でも働ける職場にしようと、子連れ出勤を認めたのもその一環。さらに、外国の大学を自ら訪問し、外国人学生のインターンシップも受け入れている。「彼らがインターンシップ後も、うちで働きたいと言ってくれるようにしたい」と一瀬氏。中小企業にとっても多様な人材の受け入れによる活性化が不可欠の時代がきているといえよう。

2016年8月29日

株式会社アトム精密 :

東京都八王子市弐分方町358-1
【株式会社アトム精密 HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏