飛躍の源泉

口コミの効果

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

化学分析の手法のひとつである液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーといったニッチな分野の化学分析装置を製造・販売する日本分析工業株式会社(東京都西多摩郡瑞穂町)。製品の売り上げの3~4割が海外向けだ。1965(昭和40)年、代表取締役の大栗直毅氏が大手電子機器企業を経て創業。翌年にガスクロマトグラフGC-Fを開発し、その後、液体クロマトグラフなどを相次いで発表、それらがいずれも高い評価を受け、化学分析装置業界で地位を確立していった。

同社は海外市場開拓に早くから取り組み、1977(昭和52)年には中国市場に進出。従業員数35人という企業規模を考えれば異例の速さだが、ニッチ性が高い同社製品は、国内市場がすぐに飽和したことに関係する。2004年には北京に合弁企業を立ち上げ、韓国にも販売拠点を開設。その他11カ国に海外代理店を持ち、欧州諸国への輸出も多い。

複数の海外営業担当者が、海外展示会や国際学会にも積極的に参加し、各国の研究者が口コミで同社の装置の性能を伝え、評判が広がったことで、パキスタンや中東諸国からも受注を獲得した。専門性が高い製品なだけに、その分野を熟知した専門家による口コミの効果が大きかったといえる。

2016年12月12日

日本分析工業株式会社 :

東京都西多摩郡瑞穂町武蔵208
【日本分析工業株式会社 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡