飛躍の源泉

桑都の中小企業の挑戦

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

東京都八王子市は、かつて「桑都(そうと)」と呼ばれた。桑(くわ)の木の葉は、絹を生み出すカイコ蛾の幼虫(カイコ)のえさとなる。それほど、八王子は繊維産業が盛んだった。その名残で、現在も繊維産業にかかわる中小企業は多い。株式会社ユーエスは様々なスポーツのユニフォームや制服などのワッペンや刺繍を製造している会社だ。細かな模様や意匠を刺繍の技術で表現していく技は、他ではなかなかまねできないものだ。

同社で企画・営業を担当する内田公祐氏(現社長の息子)は「八王子がものづくりの盛んな場所、繊維産業の盛んな場所だということを広くPRしたい」と考え、市内の中小企業後継者仲間と様々な取り組みをしている。

秋に開催された緑化フェアでは、仲間の企業と一緒に、カプセルトイ(レバ―を回すと玩具が出てくる機械)の中身を作った。「直接、商売に結び付くかどうかは別にして、まずは自分たちが何を作っているのかを知ってもらうことから始めたい」という。八王子野菜を刺繍で表した作品も制作した。東京オリンピック・パラリンピックでは、「メード・イン・東京」の製品を求める外国人が増えるのではないかと予想されている。小さな町工場の取り組みが新しい名品を作り出す可能性も高い。

2018年1月9日

株式会社ユーエス :

東京都八王子市叶谷町1565-9
【株式会社ユーエス HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏