飛躍の源泉

生き残るために変わり続ける

岐阜経済大学経営学部講師
大前 智文 氏

岐阜県土岐市下石(おろし)町の伝統的な「美濃焼」産地に立地し、主に和食器の企画・製造・販売を営む株式会社カネコ小兵製陶所。独自のマーケティングに基づく現代的な感覚の和食器が国内外から評価されるとともに、多品種・少量・短納期かつ高付加価値のものづくりに邁進している。

創業は1921(大正10)年。神仏具などの製造を経て、高度成長期には熱燗用の徳利製造に特化。日本一の生産量を誇る徳利メーカーへと成長した。しかし、1990年代には徳利の需要減退に直面。1998年に3代目として事業を継承した現代表取締役社長の伊藤克紀氏は「どうしたら生き残れるか」を模索し、大きな事業転換を決断。夫婦の協力による市場調査に基づく新製品の開発を進めた。

試行錯誤の末、ガラスのように深く輝く「ぎやまん陶」、陶器のような温かみや風合いを有する機能的な磁器「リンカ」などのヒット商品の開発に成功。また、製造現場の近代化に取り組み、筋肉質な事業体制を構築した。

伊藤氏は「『伝統』は『創造』の積み重ね。企業として生き残るということは変わり続けるということ」と話す。産地の伝統や自社の成功経験に縛られることなく、「企業の継続」のための「変化の連続」から未来をつかみ取る。

2017年7月24日

株式会社カネコ小兵製陶所 :

岐阜県土岐市下石町292-1
【株式会社カネコ小兵製陶所 HP】

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大前智文

1982年愛知県生まれ。
名城大学経済学部特任助手を経て、2017年より岐阜経済大学経営学部講師に着任。日本中小企業学会幹事。駆け出しの研究者としてフィールドワークを重ね、中小企業に関する調査・研究に取り組む。

大前智文