きらめき企業

日本の鉄道網を支える
国産電車線金具の先駆者

東洋大学経営学部教授
山本 聡 氏

町工場が建ち並ぶ大阪府東大阪市にある株式会社電業。4代目代表取締役社長の濵谷和也氏は東大阪商工会議所会頭を務める地元の名士だ。

同社は鉄道の架線を支える電車線金具を製造・販売し、鉄道という社会インフラを支える縁の下の力持ち。創業者は明治生まれの濵谷勇太郎氏で、生家は姫路の廻船問屋。神戸の外国人居留地の警察官となり、英国系商社ヒーリング商会に勤めるという異色の経歴を有する。勇太郎氏はヒーリング商会で、鉄道部品や電力部品の製造会社と取引をしていたが、製造会社の廃業に際し、事業と「電車線金具の国産化」という夢を引き継ぐ形で、1919(大正8)年に電業を創業した。

創業以来、モノづくりを強く志向。鉄道部品は安全第一であり、不良品を出せないため、製品の品質管理には特に傾注してきた。関東大震災や太平洋戦争といった激動の中で、鉄道インフラを支えるため力を注いだ。

戦後は東海道新幹線建設にもかかわる。東海道新幹線に必要な電車線金具を当時の国鉄技術者と共同開発し、製造したのだ。その後、同社は新幹線網の建設・整備と歩みを同じくして、電車線金具を日本全国に供給。日本の鉄道の発展を支えながら、創業者の夢を実現してきたのである。

2023年12月18日

株式会社電業

大阪府東大阪市高井田中2-5-25

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所、東京経済大学経営学部専任講師・准教授を経て2019年4月から東洋大学経営学部教授 (担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。

山本聡