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甘えがなくなった桐生祥秀
6年ぶりの「日本一」に輝く

スポーツライター
酒井 政人 氏

10月上旬に行われた日本陸上競技選手権大会。男子100mで桐生祥秀が6年ぶりの優勝に輝いた。前半は多田修平が飛び出し、終盤はケンブリッジ飛鳥と小池祐貴が強さを発揮。それでも桐生は動じなかった。2位とは0秒01差。「勝負弱い」と言われてきた男がスリリングなレースを制した。

「自分の走りをしようという気持ちで臨み、それができた。最後まで冷静に走れたのが勝因かなと思います」

2013年に10秒01を叩き出してから桐生は日本短距離界の中心にいた。

しかし、日本選手権での過去4年の成績は3位、4位、3位、2位。それでも少しずつ記録のアベレージを上げてきた。9秒台は1度だけだが、10秒0台は21度。そのうち11度はこの2年に出したものだ。「甘えがないシーズンだった」と振り返る今季は特に充実していた。0秒01を争う過酷な世界。日々の小さな積み重ねが王者への道につながった。

2020年10月19日

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酒井 政人

1977年生まれ。
箱根駅伝を目指し、東京農業大学に進学。1年時に同駅伝10区に出場。卒業後からライター活動を開始。著書に『箱根駅伝ノート』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。