神事としての大相撲に
思いを致した無観客場所
スポーツライター
石川 哲也 氏
石川 哲也 氏
3月の大相撲春場所は新型コロナウイルスの感染拡大により無観客で行われた。しかも力士、親方ほか関係者から感染者が出たらその時点で打ち切りという条件付き。すべての力士が相撲を取るだけでなく、ウイルスという見えない敵と戦うことを強いられた。そんなこれまでにない緊張感の中で賜杯を手にしたのは横綱の白鵬だった。
「長いような早いような15日間だった。すべての優勝の味は違うが、今回の優勝は特別」
古来から力士の踏む四股には邪悪なものを土の下に押し込む力があるといわれてきた。観客のいない横綱土俵入りで会場に響く四股の音に、神事としての相撲に改めて思いを致した向きもあることだろう。戦争、災害を乗り越え歴史をつないできた大相撲。無観客であっても本場所が開かれた意義は小さくない。国技の持つ力で世の中が安寧を取り戻すことを誰もが願っている。
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1977年神奈川県生まれ。
野球を中心にスポーツの歴史や記録に関する取材、執筆をライフワークとする。著書に「歴史ポケットスポーツ新聞 野球」(大空出版)、「メジャーリーグ大記録への挑戦」(宝島社)など。