飛躍の源泉

地域活性化に貢献する学校

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

ちょっとしたつまずきで学校や職場に行けなくなり、独力での立ち直りが難しい人は少なくない。そんな人たちのための学校が長野県上田市の認定NPO法人「侍学園スクオーラ・今人」。高校教師だった長岡秀貴氏が自らの理想の学校を形にしたものだ。2015年にはその過程が映画化され(『サムライフ』、主演・三浦貴大氏)、話題になった。現在も全国で自主上映会などが催されている。

長岡氏は、公教育と対立するのではなく連携を取り、さらに地域の中小企業とも連携し、最初は週1日のアルバイトからでも働けるように体制を整えている。上田市の中小企業との連携の輪は広がっており、「2010年に学園の建物が火災で焼失した際は翌日には地元経営者たちから支援の声がかかり、新しい校舎も見つかってその力に驚いた」と学園の藤井雄一郎統括コーディネーターは話す。

今、上田市には、学園の卒業生や関係者が働くブックカフェや飲食店などが開業し、若手の起業家たちの連携が生まれている。さらにその連携に触発された若い世代が上田市にやってきている。地域創生が叫ばれる中、長岡氏の取り組みは単なる学校経営にとどまらず、上田市周辺の活性化に寄与しているのだ。新しい風が信州に吹き始めている。

2016年11月14日

NPO法人 侍学園 スクオーラ・今人 :

長野県上田市本郷1524-1
【NPO法人 侍学園 スクオーラ・今人 HP】

過去記事一覧

中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏