ブランド創りのカギは「やせがまん」
神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏
中村 智彦 氏
神戸の中心地・三宮から車で30分ほど。弓削牧場は、郊外型住宅地の中にある。おしゃれなたたずまいのレストランや売店が並び、まるで絵本の中の森に迷い込んでしまったかのよう。牛たちものんびり過ごしている。
1970年代、政府による生乳の生産調整が始まった。搾った牛乳を無駄にしない方法はないものか。場長の弓削忠生氏は、良い考えはないかと、牧場に招待するなどして多くの人の知恵を集めた。そこで出てきたのが、チーズを作るという案。お手本はなく、手探りで生産方法を学び、完成させたが、なかなか売れない。当時、チーズはまだなじみのある食べ物ではなかった。そこで「チーズの食べ方を提案しよう」と、レストランを開設。「チーズではなく、シフォンケーキが先に人気になったことも」と、妻の和子さんが思い出して笑う。
今でこそ、6次産業化、農商工連携などの好事例として紹介される弓削牧場だが、この2人の酪農に対する優しい愛情と、チーズを日本に紹介したいという強い思いが周りの人を感動させ、都市の中小農場を奇跡的に残してきた。「何度も挫折しかけました。ブランド創りなんてかっこよく言いますが、要はやせがまんですよ」。そういってほほ笑む2人の言葉に経営の大切なものが含まれている。
2015年5月18日
有限会社レチェール・ユゲ (弓削牧場) :
兵庫県神戸市北区山田町下谷上西丸山5-2
【弓削牧場 HP】
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(2015年5月11日)
1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】