飛躍の源泉

がんばれ、日本の鋳物産業

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

良質の砂が採取でき、昔から鋳物産業が盛んな愛知県知多半島。株式会社古久根もそんな鋳物会社の1社だ。だが、1950年の創業当時は織機と木工機械を製造しており、後に鋳物製造に進出。このため、鋳物製造から部品、機械製造まで一貫して行える強みを持つことになった。

会社を訪ねると、代表取締役社長の古久根靖氏がにこやかに迎えてくれる。「手間がかかるため、やめた会社が多い発泡スチロールを使った鋳造を現在も続けています。発泡スチロールに特殊な液を使って筆で字を書くと、立体的な書道ができます。それを鋳物にすると、ほら」と見せてくれたのは、書家の息遣いが感じられるような鋳造作品。ほかにもユニークな製品を次々に見せてくれる。

鋳物工場は、高温で危険も伴う作業があり、技術者は年々高齢化して減少している。しかし、鋳造技術は日本の製造業を支える縁の下の力持ちであり、なくなれば、日本の製造業も存立基盤を失うことになる。

古久根氏は「ものづくりの根幹の鋳物だからこそ、元気で楽しくやっていかなくては」と話す。従業員の平均年齢は30歳代前半と若い。こうした会社があってこその日本のものづくりだと感じさせられる鋳物工場である。

2015年8月3日

株式会社古久根 :

愛知県碧南市須磨町1-22
【株式会社古久根 HP】

過去記事一覧

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦