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Book

『美しき愚かものたちのタブロー』
(原田マハ著、文藝春秋)

今年開館60年を迎えた東京・上野の国立西洋美術館。モネやルノワール、ロダンなど屈指のコレクションを誇る同館の礎をつくったのが不世出の美術収集家で、神戸・川崎造船所(現在の川崎重工業株式会社)初代社長の松方幸次郎氏(1866~1950)だ。

本書は「日本の若者に本物の西洋美術を見せたい」と美術館建設を夢見た松方氏と、志を共にし名画を捜し歩いた美術史家、ヨーロッパの戦火の中で収集した絵画を守り抜いた元軍人、戦後、フランス政府に接収された収集品の返還交渉に臨んだ首相たちの物語。著者が関係者らを丹念に取材した史実に基づくフィクションだが、美術ファンならずとも興味深い内容だ。第161回直木賞候補作。作中に登場の名画の数々は9月23日まで、国立西洋美術館「松方コレクション展」で公開中。

2019年8月26日