廃墟マンション問題
住宅・土地アナリスト
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
滋賀県野洲市が、空家対策特別措置法(以下、空家法)に基づき、廃墟化したマンションの強制解体を決めるなど、老朽マンションの終末期をめぐる問題が急速にクローズアップされている。マンションが廃墟化した場合、取り壊しの責任は戸建てと同様、所有者にある。
これまでマンションを自主解体した例としては、越後湯沢のリゾートマンションの例(1975年築、2018年解体、30戸)があるが、たまたま積み上がっていた修繕積立金3500万円を解体費用に充当できたことによる。また、現行法制では、マンションの解散(区分所有権解消)には原則、区分所有者全員の同意が必要だが、このケースでは推進役のリーダーの尽力により議決が可能になった。
今後はマンション解散のハードルを、建て替えと同様、5分の4の同意に下げる必要がある。併せて、修繕積立金に加え、解体準備金の積み立ても必要になってくるだろう。
一方、野洲市のマンション(1972年築、9戸)は議決できず、自主解体できなかったため、代執行が必要になった。解体費用は請求しても、全額回収できるかどうかはわからない。空家法は共同住宅の場合、全室空室にならなければ適用できないが、このケースでは全室が空室だったため適用できた。今後は居住者がいても危険な状態に陥った場合、強制措置を発動できるマンション版の空家法も必要になるだろう。
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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などの研究員を歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】