日本の問題

空き家を増えにくくする方法

シンクダイン 研究主幹
米山秀隆 氏

総務省統計局「住宅・土地統計調査」が5年ぶりに発表され、2018年時点の空き家数は846万戸と、過去最高を記録した。一方で、空き家対策としては、法律により問題のある空き家の強制的取り壊しができるようになり、その効果も出ている。

今後、空き家を増えにくくする方法としては、建築時点で長持ちする住宅を建て、それを次の世代が中古住宅として使い続ける、欧米型の市場に変えていく必要性がかねて主張されてきた。しかし、国が普及を目指す「長期優良住宅」は2018年度時点でも、戸建て新築住宅の25%程度に過ぎない。建築コストがかかる点がネックになっている。

これに対し、空き家を増えにくくするもうひとつの方法としては、建築時点で将来の解体のしやすさを考慮しておくという考え方があり得る。

1代限りの使用と割り切り、必要な機能は確保しつつも、簡素な造りにしておくことがこれに当たる。その一例は江戸の家の造りで、しばしば大火に見舞われ、消失する可能性を考慮し、建築時にお金はかけず、また、延焼防止のために取り壊しやすい構造になっていた。

欧米型モデルの普及に限界があるとすれば、1代限りで壊す前提の住宅供給モデルがあっても良いのではないか。さらに現代においては、使用が終わった後の資材のリサイクルのしやすさもあらかじめ考えておけばなお良いと考えられる。

2019年8月26日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研を経て、2019年4月から現職(シンクダインはカシワバラコーポレーションのシンクタンクであり、2019年10月にカシワバラコンパスに社名変更の予定)。専門は、住宅・土地政策、日本経済

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏