見直される「過剰サービス」
学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏
伊藤元重 氏
小売業や外食産業で24時間営業を見直す店が増えてきている。最近では、コンビニエンスストアのオーナーが24時間営業を続けることは無理だと訴え、本部と衝突したこともあった。
24時間営業だけでなく、日本のサービス産業や小売業では、見方によっては「過剰サービス」とも受け取れるような現象が広範囲で見られる。百貨店などの過剰な包装はその典型例だろう。
ガソリンスタンドのサービスでも、友人の米国人がジョークを言っていた。少し前の話だが、米国人が日本のガソリンスタンドに自動車を入れたら、何人かの若い店員がどっと車に寄ってきた。強盗だと思い、その米国人は逃げ出したという。もちろん、車の窓を拭いてくれる店員なのだが、セルフサービスが当たり前の米国人には何人もの若者が車のサービスに取り組む姿が異様に映ったのだろう。
こうした「過剰サービス」は、デフレの中でさらに顕著になってしまった。安い労働力を使い捨てにすることができたということなのかもしれない。ただ、そうした経営は今の時代には必ずしも合っていない。労働力不足と賃金上昇の中で、適正なサービスと料金がどうあるべきか、多くの企業が問われている。
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1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】