日本の問題

外国人労働のブレーキとアクセル

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

日本では2017年10月末時点で約128万人の外国人労働者が働いている。不法滞在の労働者を含めれば、もっと多くなるだろう。コンビニエンスストアから農業や水産加工、建設から製造業まで、多くの分野が外国人労働なしには存続が難しくなっている。

問題は、そうした外国人労働者の多くが、労働のためではなく、他の目的で入って来た存在であるということだ。最近の動きをみると、技能実習生や留学生の形で働いている人の数が増えている。技能実習は意味のある制度だが、それが低賃金労働に悪用されているケースも多い。それもあって、年間7000人近い実習生の失踪が起きている。留学生でも学ぶために働くというより、働くために留学生の資格を利用するというケースが少なくないようだ。

こうした現状は是正しなくてはいけない。だから実習生も留学生も制度をより厳格に運用する必要がある。つまり、ブレーキをより強く踏む必要がある。その一方で、正規ルートでより多くの外国人労働者を受け入れることも必要となるだろう。介護や農業など限られた分野できちっと管理された形で外国人労働を受け入れるのだ。つまりアクセルを踏むことも必要なのだ。

2018年12月17日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)