日本の問題

土地神話の真の崩壊

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

1990年の株価下落に始まったバブル崩壊後、土地の値段が右肩上がりに上昇し続けるという、戦後に形成された「土地神話」は崩壊した。しかしその後も、住宅・土地の保有志向は弱まることはなく、むしろ、価格下落は取得の好機ととらえられた。

しかし、最近の空き家問題や所有者不明土地問題の深刻化は、住宅・土地を持つことの意味を、人々に改めて問うている。取得した以上、最後まで責任を持たなければならず、必要なくなったからといって安易に放棄することはできない。

売却を含め、自分の後に使う人がいない場合には、固定資産税の納付義務や管理責任を果たし続ける必要がある。つまりは、取得したとしても最終的に処分できないような住宅・土地は、自分や子孫にとって重荷になるだけである。こうした認識が共有されつつある現在は、本当の意味で土地神話が崩壊する過程にあるといえる。

シェアリングエコノミーが広がりを見せているが、住宅も今後は、必要な期間、必要な広さや条件の住宅に住めればよく、所有にはこだわらないという考え方が、じわじわと広がっていくのではないか。

2018年1月29日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏