日本の問題

移住者の呼び込み競争

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

近年は東京圏への人口移動が増える一方、人口減少に悩む地方では移住者の呼び込み競争が激しくなっている。過疎地などでは移住者呼び込みのため、手厚い経済的支援を行っている自治体も多い。こうした施策の多くは、広く地域への移住者を求めるものであるが、ターゲットが広くなると、訴える力が弱くなるという難点がある。

これに対し、移住者呼び込み戦略として最近注目されているのは、自治体にとって来てもらいたい人材のターゲットを絞り、重点的に支援するものである。

第一に、特定の技能を持つ人をターゲットに、地域産業振興などに資する人材として優遇して迎えるというもの(大分県竹田市)。第二に、地域活性化に資する具体的な事業の提案を募集し、優秀者に活動資金を与え、実際に起業してもらうというもの(島根県江津市)。第三に、地域で不足する職種、たとえば介護職に就いてもらう条件で、シングルマザーなど特定の人に来てもらうというもの(島根県浜田市)などがある。いずれもターゲットは絞られるが、ターゲットになる人に深く訴え、挑戦してみようという気を起こさせる点で共通している。

2017年11月6日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏