日本の問題

岐路に立つ動物園

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

上野動物園でのジャイアントパンダ誕生のニュースに沸く一方で、全国に90ほどある動物園の多くが岐路に立たされている。入園者数の低迷や施設の老朽化に加え、ゾウやキリン、ゴリラなど人気者の高齢化が進み、死亡する例が相次いでいるのだ。

福岡市動物園では推定46歳の雌のアジアゾウ「はな子」が9月に死んだ。1973(昭和48)年の来園以来、人気投票で1位になるなど多くの来場者に親しまれていた。

大型動物の多くは高度経済成長期に来日し、子どもばかりか大人の心も癒し続けてくれた。しかし、半世紀ほどの年月が過ぎ、寿命を迎えるようになっている。

新たな人気者の来園を求める声はどこの動物園でも強いが、簡単にはいかない。今日ではワシントン条約で野生動物の国際取引が厳しく制限されているうえ、日本の動物園の狭い飼育環境は動物虐待にあたるとの指摘もあるからだ。

北海道旭川市の旭山動物園のように、行動展示という手法でペンギンなど動物の自然な生態を見せて人気を博した例もある。日本の動物園のあり方について、そろそろ見つめ直してみる時期がきたようだ。

2017年10月23日

過去記事一覧

荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏