日本の問題

深刻化するIT人材不足

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2017年5月の情報処理・通信技術者の新規求人倍率(常用、パート含む)は3.87倍にも達し、IT人材不足が深刻化している。また、株式会社リクルートキャリアの調査では、システムエンジニア(SE)の6月の転職求人倍率は3.31倍、WEBエンジニアを含むインターネット専門職にいたっては5.83倍にも達し、転職市場でもIT人材の需給ひっ迫は激しい。

その背景には、e-ビジネスの急拡大があるが、加えて情報セキュリティ対策やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ解析など先端IT分野における人材需要の急増もある。一方で、人材供給源となる若年人口は減少しており、経済産業省の予測ではIT人材の不足は2018年に約24万人、10年後の2028年には約52万人へ拡大するという。

SEやインターネット専門職の間には長時間労働のわりに賃金が低い、スキルの陳腐化が早い、将来のキャリアに不安があるといった不満がある。こうした不満を解決しなければ求人側はIT人材を確保できず、経営に隘路が生ずることになる。

2017年7月31日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏