日本の問題

村議会廃止

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

高知県大川村が村議会の廃止を検討すると表明して注目を集めている。県北の山間部にあるこの村は人口約400人で、高齢化率は4割を超える。議員定数は6人と少ないが、現職議員の平均年齢は70歳を超え、新たななり手の見込みもない。2年後の村議選の立候補者不足を見越しての判断である。似た状況の過疎町村は少なくない。

地方自治法には「町村は条例で議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」と定められている。しかし、議会に代わる町村総会の活用は過去に1例しかなく、お手本となる条例も存在しない。

実際の総会運営を考えても、点在する集落から移動のままならない高齢者に一堂に集まってもらうことは容易ではなかろう。情報技術でサポートするにしても、費用やリテラシー(活用能力)の問題が立ちはだかる。

日本の地方自治体は、首長と議会の二元代表制で一律に運営されてきた。今後も一律主義を貫くなら、合併による再編も選択肢となる。一方で、地域社会の実情に即して総会を実現可能にするためには、議会では過半数が求められる定足数の緩和が欠かせないだろう。

2017年6月26日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏